「うましかしがいひこち」神という神格は、ヲシテ文献でも一筋では理解できない難解な存在です。
古事記では、宇摩志阿斯訶備比古遅神と表記され、八百万神に先駆け、天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神の造化三神の次に生まれた神であり、次に生まれた天之常立神を加えて、別天神とされています。日本書紀本文には記されませんが、一書では、可美葦牙彦舅尊と表記され、天常立尊や国常立尊等と同格の始原神として扱われています。記紀ともに「国(大地)がまだ水に浮かぶ脂のように固まらずに漂っていたとき、アシカビ/葦牙(葦の芽)の様に萌え騰がり成った神」という解釈に拠っていると思われます。
この神名は、『ホツマ』には無く『ミカサ』の序文や、第六「タカマなる綾」に登場します。
『後 十一の君 キ・ツ・ヲ・サ・ネ ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウも 天に還り サコクシロにて 御言宣 みな星となす この神は ハラワタ命 御食を守る ウマシアシカイ ヒコチ神 故アメ尊 ワの尊』ミ6文
とありますので、「キツヲサネ+アミヤシナウ」の十一神(そひ神)と同一であると理解されますが、『ホツマ』では、この「そひ神」として記述されています。
駒形氏は「うまし+あしかひ+ひこち」と分解して考察されてます。「可美し」「葦牙」「引交ち」と読み解くと「生命力のある葦の芽のような優れた力を具有した」(神)の表現ともとれます。あるいは、「あしかひ=葦茅」とみると「水辺の葦と野山の茅それぞれの優れた性質と成長力を兼ねそえた」(神)とも理解できます。
葦も茅もイネ科植物ですが、それぞれ「ヨシズ」や「茅葺き」など陽光を防いだり雨露を防ぐ住宅材なので、「屋敷守神」であると考えることも出来ます。「ハラワタ命 ミケを守る」とありますし、「そひ神」は「むろ(室)そひ神」とも記されますので、生活に身近な神さまです。
ですが、「(この神は)天に還り サコクシロにて みな星となす」とあるところが重要です。
「地にいた神が、天に還り、星となって、地の人びとの暮らしと命を守る天の神となる」とおり、「天地をめぐる」ご神格であることを見逃せません。これは、「五臓六腑/ゐくらむわた」という言葉の謎にも関わります(別の機会にふれます)が、天地や、方角や、季節のめぐりが、人体の構造に関わり、人体の構造が、宇宙の構造にまたつながる、というホツマの宇宙観に立脚しているのです。
記紀においては、始原神として「やがて消え去る」神でしか無いのですが、ホツマにおいては「天即地即人」の巡りが本質なのです。
(駒形「ほつまつたゑ解読ガイド」参照)
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宇摩志阿斯訶備比古遅神という神様がいらっしゃいます。始原の神で、かなり強力な神様です。
この神様は、『この神の出現を語る「葦牙(あしかび)の如く萌え騰れる物に因りて成りし神の名は」という表現と対応している。『日本書紀』では、七通りの伝のうち三つの伝に「可美葦牙彦舅尊」と見えており、読みは訓注で「可美」を「于麻時(ウマシ)」、「彦舅」を「比古尼(ヒコヂ)」と読ませている。』(國學院データベース)。
記紀伝承では、天地の始め頃に出現し、そのままいなくなる不思議な神なのですが、ホツマツタヱでは、その正体が、詳しく語られているのです。
さてさて、、、
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