ホツマツタヱでは、人倫と治政の要諦を「はたおり」においていたことがわかります。経糸と横糸がしっかりと筋目を整えて綾をなす状態を男女の、そして政治の理想としていました。
アマテル大御神の妃たちは、宮中で日々、機織りにいそしむ生活をされていたようですが、ハタオリ・キヌツヅリ・タクハタ(機織り 衣綴り 栲機)の用語を解説して駒形一登氏は、
【夫婦の役割分担として、男は表業に務め、女は内を治めて機を織る(衣を綴る)べきだという。『機を織る』というのは「まっすぐな経糸 (主・日・男) に、緯糸 (従・月・女) を隙間なくぴったり添わせて通す」ということであり、これは妻が夫に「ぴったりと添って一筋を通す」=「操を立てる」ことを象徴する行為となる。】
と解きますが、君も臣も政治という表業で「はたおり」をされていたのです。
指導者を「ヲサ/長」と呼称するのも「はたおり」の「ヲサ/筬」からきており、ヲサを取りまとめるモノノベたちは経糸となり、後の「国造」である「ツウヂ」には、補佐官兼監視官として「ヨコベ」を派遣しました。「ツウヂ」「ヨコベ」はともに織物用語です。
「はたおり」を漢字で「機織り」と表記しますが、シナ語の「機」や、「布」「紡」「織」には、治政と関わる要素は、ほぼ無く、あるとすれば「父子継承」あるいは「たくらみ、はかりごと」と云う意味合いだけです。ホツマツタヱが説く「ト(斗)の教ゑ」が、陰陽男女の協業や、君民の親和をたかく尊重するのとは大きな違いがあることを感じます。
余談ですが、七月七日の「たなばた/七夕」まつりをシナ起源と説くのは幾重にも誤説です。そもそもホツマ・ミカサに頻出する本朝起源のお祭りですし、天の川を指す言葉であり、夜空の星に天御祖を祭るお祭りですし、本朝のお姫様は嫁いでからもせっせとはたおりを欠かさぬ生活をしていたからです。恋愛物語ではなく天地人の御恵みを寿ぐお祭りが「たなばた」です。
さて、「たて/経糸」と「よこ/横糸」が筋目を通していれば、夫婦は円満で、国土は安寧なのですが、それが乱れると世の中には怪しい雲が漂います。
前号の前編で好評を頂いている「秦氏考」。その後編は意外な展開です、どうぞお楽しみに。
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ハタオリは、ホツマ伝承で重要な語句です。政事も、人倫も、男女の仲も「ハタオリ」を基準に筋目が定められていました。
はるか後代の応神天皇に頃来朝の秦氏が、ハタオリの祖、などは妄説に過ぎません。本号では、ナビ彦さんが、極めて興味深い「秦氏論」を寄稿されています。
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