縄文叙事詩ホツマツタヱ

検証ほつまつたゑの編集長とらさんがリリース

【ホツマの論点】モチコは鎮魂されたのか <102号 令和元年4月>

 箱根に遊覧船の浮かぶ芦ノ湖がありますが、湖畔に九頭龍神社が鎮座します。毎月一三日が月次祭で、この日には特別遊覧船が運航し、数百人の参拝者が訪れます。財運と恋愛運に絶大な御神徳があるという評判で、女性達やスーツ姿の男性が狭い社前を埋め尽くします。

 ホツマ伝承に親しむ者にとって、「トホカミヱヒタメの八元神を祭ることが多い八大龍王とサスラ姫ハヤコの化身した八岐大蛇は、別物」であり「八岐大蛇とコカシラノオロチ(九頭龍)に化身したマス姫モチコは、別種」と認知しています。モチコは、アマテルの初皇子を産んだ名門令嬢であったのに、正后の座をセオリツ姫に「奪われ」愛息も日嗣の皇子に成れませんでした。妬みの奈落の果てに復讐の鬼となり、各地を流離います。

 ヱゾシラタツ岩木山奥宮・白雲大竜神/白神山地/小樽赤岩山白龍神社など推定地あり)で、セオリツをかみ殺すべく潜伏していましたが、津軽の外ヶ浜でシマツウシに成敗されかけたところを逃げ失せます。越の洞穴経て信濃に出たところで、戸隠神タチカラヲによって魂断ちされたと、ホツマは伝えます。本伝に箱根潜伏の記述はありませんが、箱根は愛息から日嗣の地位を「奪った」オシホミミが祀られる聖地であり、セオリツは、弁天神として芦ノ湖湖畔(旧社地は恩賜公園の弁天の鼻)に鎮座してオシホミミを見守っています。モチコにとっては、憎しみの炎に火が付く「羨むばかりの幸せな風景」となっています。ちなみに、ハヤコ八岐大蛇は、ソサノヲに斬られた後、「ヤスカタ(安像)」と懇ろに祀られたので「タマホドキ」されたかと思いきや、イワナガ姫に取り憑き、ニニキネを「奪った」アシツ姫を呪う過ちを繰り返しました。

 箱根神社の社伝は、奈良時代中期に万巻上人が、芦ノ湖で暴れる九頭龍を調伏させて中興したと伝えますが、上人は、ハタレ魔退治で、「タマホドキ」を施したタケミカツチを祭る鹿島神宮に護持寺を建立した人物です。調伏した法力は「タマガエシ」だったのでしょうか。(本号 駒形論文参照)

 ともあれ、「財運と恋愛運」を求めて九頭龍社を崇めるのは止めたほうが良いと思います。「奪われた」と妬む念いは、そのものが「ミノカサ(瘡)」。自らまとっているものだから。(本号「蓑笠神社」参照)

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今年(令和6年)の春分に、箱根芦ノ湖の九頭龍本社に鎮座する弁天社の鳥居が倒壊しました。わたしは、この倒壊は箱根における「結界」の崩壊の帰結とみています。古社の存在は、その位置と祭祀の時とにすべてが規定されています。変えてはならないのです。

五年前の春に、この論考を書いたことに、今さらながら驚きます。来週末には、恒例の芦ノ湖巡り(不二講の修法)を予定していますが、現地でもう一度神々の思いを聴き取りたいと思っています。